インタラクティブデモを作るとき、思ったより時間を取られるのは画面の収録ではありません。各ステップに添える説明文(キャプション)です。10ステップのデモなら10本の短文が必要で、しかも「どこを押すか」だけでなく「押すと何が起きるか」まで書こうとすると、途端に手が止まります。
そこで生成をAIに任せる動きが広がっていますが、実際に使うと「敬語が過剰」「翻訳調になる」「画面に無いことを書く」といった問題にぶつかります。この記事では、AIに任せる範囲と人が直す範囲の分担という観点で、品質を安定させる考え方を整理します。ツールを問わず応用できる内容です。
AIの説明文が不自然に感じられる3つの理由
ひとつ目は、情報の粒度が合っていないことです。AIは画面全体を説明しようとしがちですが、閲覧者が知りたいのは「いま何を押すのか」と「押すと何が起きるのか」の2点だけです。要素を余さず紹介した文章は、正確でも読み飛ばされます。
ふたつ目は、敬語の過剰です。「〜していただきますようお願いいたします」は丁寧ではあっても指示としては冗長で、限られた文字数を無駄に使います。求められるのは、へりくだりではなく明快さと、最後まで揺れない敬体です。
みっつ目は、画面の文言との不一致です。ボタンに「請求書を発行」とあるのに説明文が「インボイスを発行します」となっていると、閲覧者は一瞬どのボタンか分からなくなります。言い換えは親切のつもりでも迷いを生みます。
AIに任せる部分と、人が直す部分を先に決める
品質を安定させる近道は、推敲を始める前に分担を決めておくことです。何を直すか毎回考えるから時間がかかるのであって、見る観点が数個に固定されていれば1ステップ十数秒で通せます。
「なぜこの操作をするのか」は画面を見ただけでは分かりません。ここが人にしか書けない部分であり、デモの価値がいちばん出る部分でもあります。逆に、語尾を整える作業に人の時間を使うのはもったいない使い方です。
- AIに任せる:操作の言語化(押した要素と、その結果を文にする)
- AIに任せる:語尾と敬体の統一(デモ全体で「です・ます」を揃える)
- AIに任せる:長さの調整(長すぎる文を縮める、短すぎる文を補う)
- 人が直す:固有名詞・社内用語・製品名の表記
- 人が直す:業務上の理由(なぜこの操作をするのか)
- 人が直す:前後のつながり(話が飛んでいるステップの補足)
良いキャプションを「検証可能なルール」にする
「自然な日本語で」といった曖昧な基準では、レビューする人によって判断が変わります。読めば真偽が判定できる形にしておくと、AIへの指示にも人のチェックにもそのまま使えます。
最後の2つは見落とされがちです。「12件が表示されます」と書くと、撮り直したときに画面と食い違います。場所も同じで、文章ではなく注目枠やズームで示すほうが、画面が変わっても翻訳しても崩れません。
- 1ステップ40〜60字に収める(画面の下に2行で収まる分量)
- 「〜します」「〜できます」を基本にし、「〜してください」を連発しない
- 画面に表示されている文言はそのまま使い、言い換えない
- 1文1操作。「Aを開いてBを入力します」は2ステップに分ける
- 画面に映っている数値や件数を本文に書かない(撮り直すとズレる)
- 「右上の」「こちらの」など位置や指示語で場所を示さない
Sawatteでの生成と、編集画面での推敲
Sawatteでは、Chrome拡張「Sawatte Capture」を入れて普段どおり画面を操作して記録すると、AIが操作をステップに分割し日本語のガイド文を自動生成します。最短5分で最初のデモを公開できます。手掛かりにボタンの文言や要素のラベルを使うため、実際の画面用語に沿った文章が出やすくなります。
生成した文章は編集画面ですべて手直しできます。AI支援の「言い換え」「短く」「丁寧に」を使えば、40〜60字に収まらない文を縮める作業は数クリックです。おすすめは、まず全ステップを通しで読み、気になった箇所だけを直す進め方です。1ステップずつ完璧に仕上げると全体のリズムが揃いません。
記録の際に入力欄やパスワード欄へ入力した文字は、操作の記録データとしては取得しません。ただし画面の画像には写るため、個人情報が映る場合は黒塗り(マスク)が必要です。AI生成の回数はプラン別で、フリーは月5回、スターターは月50回、プロは月200回です。
AIの出力は「初期値」、直した文章は資産になる
設計思想は、AIの出力を完成品ではなく初期値として扱うことです。生成がうまくいかない場合でも素朴な雛形でデモが立ち上がり、必ず編集できる状態から始められます。
ここで効くのが、手直しした文章をどれだけ長く使えるかです。プロプランの「撮り直しても編集を維持する仕組み」なら、製品の画面が変わって収録し直しても、手を入れたガイド文が引き継がれます。引き継がれる範囲は腐らないデモの仕組みの記事で整理しています。
海外向けには、プロプランの翻訳機能で同じデモを多言語で見せられます。画面内の文字は日本語のまま残るため、ガイド文に「どこを見るか」ではなく「何をしているか」が書かれているほど翻訳後も意味が通ります。詳しくは製品デモの多言語・翻訳の記事へ。
公開前に確認したいこと
説明文が空のステップがあると公開できないようにしてあります。作りかけのまま共有リンクを配る事故を防ぐためです。また、記録した画面に地図・動画・決済フォームなど別サイトの埋め込みがあると、その部分は再現されず空白になります。該当ステップの表示方法を「スクショ」に切り替えれば解決し、録り直しは不要です。手順の全体像はインタラクティブデモの作り方の記事へ。
共有リンクを開く側は普通のWebページを見るだけで、ログインも拡張機能も不要です。読みやすさの確認は自分のスマートフォンで一度開いてみるのが確実です。
まとめ
説明文をAIで生成するときの品質は、モデルの賢さよりも「何をAIに任せ、何を人が直すか」を決めているかで変わります。語尾・長さ・操作の言語化はAIに任せ、固有名詞と「なぜやるのか」は人が書く。加えて40〜60字、画面の文言をそのまま使う、数値や位置を書かないという検証可能なルールがあれば、誰がレビューしても近い品質に寄せられます。
直した文章を長く使える仕組みまで含めて考えると、説明文づくりは毎回の作業から積み上がる資産に変わります。まずは10ステップ前後のデモ1本で試すのが分かりやすい入口です。