日本語で作った製品デモを、海外の見込み客や外資系企業の日本法人にも見せたい。けれど英語版を一から作り直すとなると、画面の記録からやり直しになって腰が重い。BtoB SaaSの海外展開でよく詰まるところです。
結論から言うと、作り直す必要はありません。ただし「どこまでが訳され、どこが日本語のまま残るのか」を理解しないまま配ると、かえって相手を混乱させます。この記事では、その前提と、前提を踏まえたデモの作り方を整理します。
訳されるのは説明文。画面の中の文字は日本語のまま残る
最初に正直に書いておきます。翻訳されるのは、各ステップに添えた説明文(ガイド文)です。記録した画面そのものは実際の製品画面の記録なので、ボタンやメニューのラベルは日本語のまま表示されます。「画面はそのまま、言葉だけ切り替える」というのが多言語デモの基本的な考え方です。
これは仕組み上そうなるというだけでなく、実務では利点にもなります。相手が最終的に使う画面が日本語UIしかないなら、英語に置き換えた画面を見せるほうが誤解を生みます。逆に、製品自体に英語UIがあるなら、英語UIで画面を記録し直したほうが自然です。どちらを見せるかは、相手が実際に触ることになる画面に合わせて決めてください。
画面が日本語でも通じるデモの作り方
画面の文字が読めない前提でも意味が通るようにするには、説明文の書き方を少し変えます。ここはツールを問わず、翻訳を前提にした操作ガイド全般で使える工夫です。
- 「右上のボタンを押します」ではなく「右上の『申請する』ボタン(Submit)を押します」のように、押す対象が何を意味するのかを説明文側に書く
- 製品名・機能名などの固有名詞は原語のまま残す。無理に訳すと、相手が実際の画面で探せなくなる
- 1ステップに1つの操作だけを書く。複文にすると訳したときに主語がずれやすい
- 稟議・締め処理・内示といった業界特有の言い回しは、訳文を必ず目視で確認する
訳す前に、日本語のほうを整える
元の日本語が曖昧だと、訳文も曖昧になります。日本語は主語や目的語を省いても通じてしまうため、そのまま訳すと「誰が何をするのか」が抜けた文になりがちです。翻訳の前に日本語版を通しで読み直し、省略されている箇所を補っておくと、訳文の質が目に見えて上がります。
1ステップ40〜60字程度に収める、命令口調を避ける、画面の文言をそのまま使う、といった書き方の基準は日本語版の時点で効いてきます。説明文をAIで整える具体的な進め方は「AIが生成する日本語キャプション」の記事で解説しています。
翻訳の手順と、使えるプラン
手順としては、日本語版のデモを完成させてから言語を選んで翻訳する、という順番になります。各ステップの説明文がまとめて訳されるので、1ステップずつ外部の翻訳サービスにコピー&ペーストして貼り戻す作業は要りません。翻訳はプロプランで使える機能です。
訳し終えたら、必ず一度は通しで確認してください。自動翻訳なので、専門用語や社内用語が意図と違う訳になることがあります。とくに数値の単位、日付の形式、金額の通貨表記は、そのままだと相手の商習慣に合わないことがあるため、説明文側で補っておくと親切です。
海外の相手に配るときの実務
共有リンクは、閲覧側から見れば普通のWebページです。ログイン不要で開けるので、相手にアカウントを作ってもらう必要も、社内に何かを入れてもらう必要もありません。閲覧側の端末やブラウザも問わないため、時差のある相手に先に送っておいて、先方の営業時間に見てもらうという使い方ができます。
メールで送るときは、リンクは1本だけにします。英語のメールに複数のリンクを並べると、どれを開けばいいのか判断されないまま閉じられます。件名と本文の1行目で「操作を試せるデモである」ことが分かれば十分です。
1本を作り回す前提で設計する
多言語化を前提にすると、デモは「言語ごとに増える」ものではなく「1本を訳し分ける」ものになります。だからこそ、元になる日本語版は汎用性の高い中核フローにしておいたほうが得です。1本のデモをLP・メール・オンボーディング案内へ作り回す考え方は「SaaSのインタラクティブデモ活用」にまとめています。
なお、記録した画面に地図・動画・決済フォームなど別サイトの埋め込みが含まれていると、その部分は再現されず空白になります。対処はそのステップの表示方法を「スクショ」に切り替えるだけで、録り直しは不要です。越境ECのように外部の決済画面が絡む業務では、公開前に一度通しで確認しておくと安心です。EC・小売での活用は「EC・小売のデモ」の記事にまとめています。
まとめ
多言語デモは、画面はそのままに言葉だけを切り替えるものです。画面内の文字が日本語のまま残ることを前提に、説明文側へ画面の意味を書いておけば、作り直しなしで海外の相手にも通じます。固有名詞は原語のまま、専門用語は目視で確認する。この2点を守るだけで、訳文の事故はかなり減らせます。
翻訳はプロプランの機能ですが、いきなり契約する必要はありません。まずは日本語で1本作り、社内の英語が読める人に見てもらうところから始めるのが現実的です。円建ての公開価格で、問い合わせ不要のセルフサーブで開始できます。