EC・小売の管理システムは、機能の数ではなく「繁忙期の件数をさばけるか」で選ばれます。ところが機能一覧や資料では、その一番知りたい部分がいちばん伝わりません。受注管理・在庫管理・出荷管理と項目が並んでいても、自社の1日の流れに置き換えられないからです。
触れるデモ(インタラクティブデモ)は、1件の注文が入ってから発送されるまでを、閲覧者自身にクリックしてなぞってもらう形式です。この記事では、EC・小売向けツールのデモを「時系列で1本」にまとめる作り方と、この業種で必ずぶつかる注意点を整理します。
1件の注文を時系列で追う構成にする
機能別に分けたデモは、作る側には整理されて見えますが、閲覧者の業務とは結びつきません。おすすめは、1件の注文が入ってから発送されるまでを時系列で1本にする構成です。自社のオペレーションと同じ順番で画面が進むので、途中で「うちだとここが違う」という具体的な質問が出てきます。
1本は10〜15ステップ程度に収め、それ以上になりそうなら「通常の1件」と「例外対応(欠品・キャンセル・返品)」の2本に分けます。例外対応は現場担当者の関心が高い一方で、決裁者には冗長になりがちなので、分けておくと配る相手に応じて選べます。
- 注文の取り込み(モールや自社カートからの自動連携の結果)
- 受注確認と在庫の引き当て
- 出荷指示とピッキングリストの出力
- 送り状の作成と発送登録
- 在庫の自動減算と、各販売チャネルへの在庫反映
繁忙期のボトルネック工程にステップを集中させる
EC・小売の担当者が本当に確かめたいのは、平常時ではなくセールや年末の状態です。したがってステップの厚みは、件数が増えたときに詰まる工程へ寄せます。ここに3〜5ステップ使い、それ以外は1ステップずつで流す、というくらいの偏りで構いません。
逆に、商品登録やカテゴリ設定のような初期設定に近い工程は1〜2ステップで流します。毎日繰り返す作業ではないため、時間を割いても判断材料になりにくいからです。ズーム(拡大表示)を使えば、一覧画面の中の「処理件数の合計」や「在庫数の変化」といった小さな数字にも視線を集められます。
- 一括処理:数十件の受注をまとめてステータス変更する画面と、その操作回数
- 在庫連動:1つのチャネルで売れたときに、他チャネルの在庫がどう変わるか
- エラーの見つけ方:取り込み失敗・住所不備の一覧と、そこからの修正動線
決済・配送連携の画面が空白になる点に注意する
この業種でとくに注意したいのが、外部サービスの画面が混ざるステップです。記録した画面に別サイトの埋め込み(決済フォーム、地図、動画など)があると、その部分は再現されず空白になります。EC・小売のフローは外部連携の集まりなので、決済や送り状発行のあたりで起きやすいと考えてください。
対処は簡単で、そのステップの表示方法を「スクショ」に切り替えます。録り直しは不要で、切り替えたステップだけが画像として表示されます。動的に操作させたい主要ステップはそのまま残せるので、デモ全体の体験は損なわれません。
公開前に、閲覧者と同じ共有リンクを自分で一度開き、全ステップを最後まで送ってみるのが確実です。いちばん見せたい連携の場面が空白のまま公開されると、製品そのものの印象を落としかねません。
顧客名・住所の写り込みをどう消すか
受注一覧には氏名・住所・電話番号がずらりと並びます。行数が多い画面ほど黒塗りの箇所も増えるため、ダミーの店舗データを用意して収録したほうが早く済むことが多い領域です。テスト用ストアを1つ作り、そこで一連の注文を通しておくと、以後の撮り直しも楽になります。
一方、注文詳細のように写り込みが数箇所なら黒塗りで足ります。黒塗りはスクリーンショットに焼き込む方式なので、共有先で元の文字を復元されることはありません。画面をまるごと記録するHTML表示のステップでは効かず警告が出るため、そのステップは「スクショ」に切り替えてから塗ります。
作った1本をどこで見せるか
EC・小売の検討者は、比較記事やサービスサイトを回遊しながら短時間で候補を絞ります。サービスサイトの機能紹介の直後にデモを埋め込むと、読んで終わりになりにくく、その場で操作してもらいやすくなります(サイトへの埋め込みはプロプランの機能です)。
展示会では、ブースのタブレットに常設して説明員がいない間も自走させ、持ち帰り用にはQRコードで同じ共有リンクを配る、という2本立てが現実的です。体験の最後にリード獲得フォームを置いておくと、名刺交換に至らなかった来場者からも連絡先を受け取れます(フォームはスターター以上の機能です)。
閲覧側はログイン不要の普通のWebページなので、来場者のスマートフォンでもそのまま開きます。作成側にはChrome拡張「Sawatte Capture」が必要ですが、閲覧者に何かを入れてもらう必要はありません。
まとめ
EC・小売のデモは「1件の注文が入ってから発送まで」を時系列で1本にし、繁忙期に詰まる一括処理と在庫連動へステップを寄せる。これが基本形です。初期設定の工程を薄くし、例外対応は別の1本に切り出すと、配る相手ごとに使い分けられます。
外部連携の画面が空白になる点だけ先に押さえて、公開前に共有リンクを自分で通しておけば、直前で慌てることはありません。掲載先ごとの設計は「LPに触れるデモを埋め込む」、体験後の連絡先の受け取り方は「リード獲得フォームの設計」、当日と持ち帰りの作り分けは「展示会・ウェビナーで自走するデモ」にまとめています。