触れるデモを見ている人は、必ず途中で疑問を持ちます。「既存のシステムと連携できるのか」「うちの規模でも使えるのか」「権限は分けられるのか」。そしてその疑問がその場で解けないと、多くの人はわざわざ問い合わせフォームを開かず、静かにページを閉じます。
この「聞きたいけれど、問い合わせるほどでもない」段階の疑問を、人手をかけずに一次対応する仕組みが、デモの中でAIが質問に答える機能です。Sawatteの「聞けるデモ」を例に、どんな制約があり、何を用意すれば実用になるのかを整理します。
営業が答える前に、見込み客の疑問は消えていく
商談前の検討者は、たいてい複数の製品を並べて見ています。比較の途中で引っかかった疑問が1つ解けないだけで、その製品は候補から静かに外れます。落ちた側には理由が伝わらないため、改善のしようもありません。
問い合わせフォームは、送る側にとって心理的なコストが高い入口です。「連絡が来るようになる」ことへの警戒があり、検討を始めたばかりの段階では特に使われません。検討者が欲しいのは、匿名のまま得られる一次情報です。
一方で、その一次情報を営業が全部手作業で返し続けるのも現実的ではありません。夜間や休日は対応が空き、よくある質問には何度も同じ内容を書くことになります。ここが自動応答の効きどころです。
「聞けるデモ」でできること・できないこと
Sawatteの「聞けるデモ」は、デモを見ている閲覧者がその場でAIに質問できる機能です。プロプラン(月額¥7,980・税込)で使えます。先に制約を挙げておきます。
AIは、登録した製品マニュアルとそのデモの手順を根拠に回答します。裏を返すと、マニュアルに書いていないことには答えられません。一見弱点ですが、事実でない仕様や条件を語らせないための安全装置でもあります。誤った回答が1つ出るほうが、答えられない質問が1つあるより損害は大きくなります。
そして12,000文字という枠は、マニュアルを丸ごと入れるには足りません。だからこそ「何を入れるか」の設計が、この機能の実用性をほぼ決めます。
- 登録できる製品マニュアルは12,000文字まで(A4で目安8〜12枚相当)
- 質問できる回数は月500問まで
- 利用できるのはプロプランのみ
- 閲覧者はログイン不要。普通のWebページなので端末・ブラウザを問わない
12,000文字に何を入れるか
いちばんやってはいけないのが、既存マニュアルを先頭から12,000文字ぶん流し込むことです。多くのマニュアルは冒頭が目次・改訂履歴・画面項目の逐条説明で占められており、検討段階の質問はそこに書かれていません。入るのは読まれない部分だけになります。
配分は「商談前に実際に聞かれること」から埋めます。営業が過去に受けた質問を書き出すのが最短です。目安として、次の配分から始めると外しにくくなります。
配分は製品によって変わります。連携先が多いなら仕様欄を厚く、価格体系が複雑なら料金欄を厚く。浅く広く書くのではなく、聞かれる領域だけを深く書くのが要点です。
- よくある質問と回答:3,000〜4,000字
- 主要機能の説明(何ができて、それで何が楽になるか):3,000字
- 仕様・制限・対応環境・連携できるもの:2,000字
- 料金・契約条件・最低利用期間:1,500字
- 導入の流れと、立ち上げにかかる期間:1,000字
- 用語集(社内用語と一般的な言い方の対応):500〜1,000字
書き方のコツと、入れてはいけない情報
同じ12,000文字でも、書き方で答えられる質問の数が変わります。長い前置きのある解説文より、一問一答の形で短く区切られた文章のほうが質問と噛み合います。
入れてはいけない情報もはっきりしています。個人情報、既存顧客の名前、未公開の価格や開発中の機能、社外に出せない社内手順です。閲覧者は不特定なので「公開資料に載せられる範囲」を上限にしてください。迷うものは入れないで構いません。
月500問という枠も、使い方で消費が変わります。LPに埋め込んで広く見せるデモと、営業メールで特定の相手に送るデモでは発生量が桁で違います。まず質問が集中しそうなデモを1本だけ選び、実際の消費量を見てから広げるのが安全です。
- 一問一答の形にする(「Q. 〜できますか」「A. 〜できます。ただし〜」)
- 表やマトリクスは文章に開いて書く
- 社内用語には一般的な言い方を併記する(言葉のゆれを吸収するため)
- 「できません」も正直に書く(できない前提の質問に誤って答えないため)
- 未確定の予定や、社外に出していない価格は書かない
回答で終わらせず、次の一歩につなげる
テキストで答えるだけでは理解が途中で止まります。Sawatteでは、回答に該当するステップへ移動するボタン(「STEP 3 を見る」のような表示)が添えられ、関連する画面へすぐ移動できます。言葉での説明と実際の画面がつながることで、「できます」が「たしかにできそうだ」に変わります。
そして、答えられない質問こそ商談の種です。個別の見積り、自社環境での可否、契約条件の相談はAIに答えさせるべきではありません。ここでリード獲得フォーム(スターター以上で利用可)を組み合わせ、人に渡します。項目数や出す位置はリード獲得フォームの設計の記事へ。
海外の検討者にはプロプランの翻訳機能と組み合わせられます。時差のある相手に対し、営業が起きていない時間帯の一次対応を任せられるのは効きやすい場面です。多言語での見せ方は製品デモの多言語・翻訳の記事にまとめています。
導入するときの順番
最初から完璧なマニュアルを用意しようとすると、いつまでも公開できません。次の順番で回すと、数時間で実用の水準に持っていけます。
いちばん効くのが4番目の「自分で質問して穴を埋める」工程です。登録したマニュアルはAIにとっての視界そのものなので、見えていない領域は試さないと分かりません。営業ではない人に20問聞いてもらうと、社内では当たり前すぎて書き漏らしている前提が出てきます。デモの手順自体も根拠になるため、ガイド文の書き方はAIが生成する日本語キャプションの記事も参考になります。
- 質問が集中しそうなデモを1本選ぶ(LP埋め込み、または商談後フォロー用)
- 営業が過去3か月に受けた質問を30個ほど書き出す
- 上の配分に沿ってマニュアルを作る(既存資料の切り貼りで構わない)
- 自分で20問ほど質問してみて、答えられない質問を洗い出す
- 答えられなかった内容をマニュアルに追記して、もう一度試す
まとめ
デモの中でAIが質問に答える仕組みは、「営業の代わり」ではなく「営業に届く前の疑問を減らす仕組み」と捉えると設計しやすくなります。全部に答えさせようとせず、よくある質問・主要機能・仕様・料金の4領域を厚く書き、それ以外は人に渡す。この線引きが限られた12,000文字を活かす鍵です。
運用のコツは、最初から広げないことです。1本のデモで実際の質問を眺め、答えられなかったものを足していく。この繰り返しが、そのまま自社の営業FAQの整備にもなります。